福岡地方裁判所 昭和44年(ワ)1074号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕(一) 雑費等
原告が前記入院中の同年二月中の牛乳代として金七二五円支払つたことは<証拠>によつて明らかである。そして、原告が昭和四三年二月六日以降同月二二日までの間に合計金二、〇二五円を氷燃料飲料水古賀商店に支払つたことは明らかであるが、同年二月二日の金五五〇円が灯油代と判明するのみでその余の支払はいかなる支出か判然としない。また、原告が昭和四三年一月二九日以降同年三月二一日までの間四回にわたり福岡米穀株式会社百々道食糧販売所に合計金一、六〇〇円を支払つたことも明らかであるが、このうち同年一月二九日の金五五〇円の支払が白灯油一缶およびポンプ代金としてであることが窺われるのみである。さらに、<証拠>によれば、原告が昭和四三年二月一三日から同年五月二三日までの間チリ紙代等として西新中央薬品に合計金六〇五円を支払つたことが認められる。従つて、原告が入院期間中の諸雑費として右金額の支出は相当と考えられるので、これもまた原告の損害というほかない。
(二) <証拠>を綜合すると、同被告は福岡市藤崎方面から西新町方面に向つて市内電車の軌道敷内を時速約五〇キロメートル位で進行中、本件事故地点の市内電車防塁前電停に差し掛つた際、進行方向左側の歩道から電停安全地帯に向つて小走りに駆けてくる原告の姿を認めたので、時速を約四〇キロメートル位に減速しただけで原告が安全地帯に上るものと思い込み、その右側の軌道敷内を進行した結果、原告が安全地帯に上らずに横断を続けているのに気付き、慌てて急制動をするとともにハンドルを右に切つたが間に合わず、自車左前部を原告に衝突させて、原告をボンネット上に跳ね上げたまま滑走し、停車と同時に原告を滑り落したことを認めることができる。<反証排斤>そうすると、本件事故は被告山下が原告の横断を認めながらその動向にさほど注意を払わず、安全地帯で止るものと軽信し、徐行もせずに進行した過失に基くものと言わざるを得ない。たしかに前掲証拠によれば、右電停西側に横断歩道のあることが認められるけれども、原告が右横断歩道を通らなかつたからと言つて右判断を動かすことはできない。
(三) 過失相殺
本件事故が被告山下の過失によつて生じたことは前記認定のとおりであるが、<証拠>を綜合すると、原告は市内電車の道路を横断するに際し、電停安全地帯の西側に横断歩道があるにもかかわらず、安全地帯東側の軌道敷内を加害車の進行を認めながら小走りで横断したことを認めることができ、本件事故には原告の過失もまた一半の原因をなしたものといわなければならない。そこで、双方の過失程度を考慮するとき、原告の前記三の1ないし4の損害額のうちその四〇パーセントを減ずべきである。
(富田郁郎)